人生はじめてのスキー
ゲレンデという所は、人生初めてだった。年明け早々に、保育園でこどもが一緒の父さん母さん数名と大人だけのスキーに、日帰りで出かけた。数日後に保育園の2泊3日スキーに付き添うための慣らしが目的のツアーだが、人生初スキーの僕は、インストラクター経験のある方に一から教わるのが目的だ。保育園のスキーでは、こどもが安全にスキーを楽しめるように、子どもと同じかそれ以上人数の大人が付き添う。そして、父母は自分の子どもとは一緒に行動せず、その他の子どもたちの父親や母親として接することになっている。子どもを上手に誘導するために、バックボーゲンが出来るとよかったり、転倒した子を手助けするために、素早く近づく技術が要されたり、一緒に滑りながらも周囲の危険を察知する能力が要求されたりする。今日は、子ども抜きで練習というわけだ。
横浜から近いという諏訪郡富士見町の富士見パノラマってスキー場は周りすべて雪が無くて、晩秋の落葉樹林そのままだった。今年の12月は非常に雪が少なかった。
39歳にして初めてのスキーに挑戦して発見したことは、物事を教え教わるとは、こういうことだと改めて実感したこと。書いていたら長くなってしまったので、結論を先にまとめると、ようするに教え過ぎてもだめだということ。必要最低限を教えてもらい、あとは、後戻りできないスタート地点に立たせてもらえば、なんとか自分で考えて、自分の体でやってみる。自分で考えて体を動かす、ということに大きな意味があると実感した。
ちなみに、雪国で暮らしていた時に、人の山スキーっていうのを一人で勝手に履いて滑ったことはある。
まず板のはめ方から
さて、この日ぼくに教えてくださった方は、まずスキー板のはめ方から、横歩きでエッジを使うこと、ボーゲンでブレーキをかけることを教えてくれた。はじめは、その場でしゃがむことも出来なかったが、平らな場所で少し歩いたりしているとスキー板に慣れてはきた。早速リフトで緩斜面へ。ゆっくりとすべり出し、「両手を広げてー」ターンでは「外側の足に両手を乗せてー」などと教わった。中学生以来のスキーと言っていたおとうちゃんが、隣で滑ってくれたのも心づよかったな。何度か緩い斜面を滑ったが、案外と転ばない。このまま無転倒で帰りたいと密かに思う。斜面がきついと世界が違う
しばらくすると少しは滑れるようになった。体は緊張したままだし、ぎくしゃくしているけど、多少は滑れるようになってきた。10年ぶり、20年ぶりのスキーという同行の仲間たちにも、なかなか上手だと持ち上げてもらい、まんざらでもない気分になってきた所で、同行の先輩父さんが「話しのたねに行ってみる?」と中級上級コースに誘ってくれた。緩やかな斜面に、多少物足りない気持ちも芽生えていたので、不安には思いつつも行ってみた。下から見上げても、確かに斜面の角度は急だが、それがどういうことなのか、ぼくにはわからなかった。リフトの乗り口には「中級上級用コース」と、目立つように書いてある。先輩父さんは大丈夫大丈夫という。さて、リフトを降りて滑り出しは良かったが、だんだんきつい斜面になると、スピードが出て止まらない。習ったばかりのボーゲンだけではどうにもならない。なんとかターンしようとすると、動作が追いつかないのか、タイミングがわかってないのか、よくわからないが、とりあえず転んで止まる。止まれてよかった。できるだけ斜面を横切るようにすべっては、ターンしようとして転ぶ。と繰り返しつつ。なんとか滑降(?)。もう、「外側の足に両手を乗せてー」なんて感じじゃないスピード感だ。でも、少し楽しいかな?と思いつつ。ここでお昼ご飯。さすがスキー場、きもち割高なランチをいただき、休憩。
午後は、ゴンドラで中級上級用コースの更に上へ行くと、もう少し緩い斜面だから行こうと言われる。急斜面になる前に上に昇るリフトがあるから、そこで往復すれば言いという。さっきの1本で懲りたから、また初級コースで練習しようと思っていたけど、一人で滑るわけにもいかず、ゴンドラに。
確かに、少しは緩やかだったけど、なかなか悲惨な滑りで四苦八苦しつつ何本か滑る。転んだり、おっとっと、となったり、気持ちよく滑ってみたり、としているうちに、時間はあっという間に過ぎて、最後にこのまま中級上級用コースで帰ろうと言う事になった。後半の斜面は、お昼の前に恐怖を味わった急斜面(ぼくにとって)に続くコースだ。全長3kmらしいが、スキーの3kmってどんだけ大変か実感を持てないまま滑った。
3km長かったなー。でも、一日でそれなりに滑れるようになって達成感が気持ちよかった。普段のインドアな生活では味わえない感覚だ。
結局、最初に教わったことしか知らないけど、どうやらだんだん板を並行に揃えるといいらしいとか、スピードを出しすぎないで基本的な動きを覚える時間が必要だな、とかいろいろと周りの人を見たりしながら自分なりに考えた。そうこう考えながら、滑っては転び、どうすれば転ばないか考えているうちに、少しは上達したかも知れない。
スキーは後戻りできないのがいい
スキーって、もう下に滑るしか無いスタート地点に立ってしまうと、やってみるしか無いという状況がとてもいい。リフトで下に帰るわけにもいかないし。そして、後で聞いた話しでは「長い距離を止まらずに、できるだけ転ばずに」滑ることが、どんどん上達する秘訣らしい。これは、他の芸事にも言えるなと、納得した次第。雪国で生活しているわけでもないのに、わざわざ万端の装備を揃えて遠出するなんて、あんまり好きじゃないと思って、これまで避けていたスキーだけど、意外に楽しくなってきた。
再来年に、次女が年長になってスキーに行く時までに、ブーツと板は買っちゃおうかな。