2017年1月29日日曜日

「表現の市場」に行ってきた

「障害のある人たちと一緒につくりあげる舞台です。自由でエネルギーあふれるパフォーマンスをぜひご覧ください。」(案内パンフより)というイベント。今回は第三回とのこと。
障がいのある人達とパンを製造して販売したりしているNPO法人ぷかぷかという所が主催している。ぷかぷかは演劇をしたり、さまざまな活動をしている団体らしい。

なんと言っても、その裏面に綴られた「表現の市場に寄せる想い」という文章に惹かれた。
相模原殺傷事件への考えなどが書かれ、最後の方に、
「舞台に立っている障がいのある人たちが、ほんとうに自分の思っているとおりの人たちなのかどうか、自分の目でしっかり確かめてください」
と書いてあった。
この一文がなんとなく気になり、家族5人で行ってきた。

演目は、太鼓演奏のあらじん、ラップのはっぱオールスターズ、チェロと太鼓の演奏、聾者と聴者の人形劇のデフ・パペットシアター・ひとみ、演劇だ。

最初の「あらじん」の和太鼓に、圧倒された。10人くらいの青年が生き生きと和太鼓を叩く。社会人の人も居るかも知れないし、学校に通っている世代も居るかも知れない。平日の作業所仕事に飽き飽きしている人も居るかも知れないし、社会で厳しい風に吹かれることもあるかも知れない人達が、こんなに生き生きと表現できるものを持っていることに驚愕した。しかも、趣味で集まっているチームとしては、その音が健常者だけのチームに全くひけをとらない、ハイレベルなものに感じた。確かに荒削りな印象はあるが、若いエネルギーを和太鼓にストレートに出し切った、とても気持ちのいいサウンドだ。おそらく、若いエネルギーを持った健常な人達は、どうしても見栄というか、かっこつける気持ちを抱いてしまう。いろんな見栄があるよね、異性に対してとか、親とか家族とか。それは当然のことだが、あらじんの彼らはそういった気持ちがほとんど無いか、すごく小さいのだろう。そこが、この潔い迫力ある演奏を生み出している。感動した。
もちろん、エネルギーだけでなく、地道な練習を積み重ねた成果でもあるのだろう。息の合ったチームでの演奏、緩急、強弱の効いた表現など聴きごたえがあった。何らかの障がいを持っているからには、練習には苦労が絶えないことだろう。それを乗り越えてきた力が、すばらしいステージに表現されていると言えるのかも知れない。
さらに、あらじんは指導には健常者が関わっているだろうが、ステージは全員障がい者。100%障がい者の演奏。これもすごいと思う。よく、障がい者が何か特筆すべきことを成し遂げた場合、きわどい所まで健常者が手助けしているような事例をよく見掛ける気がする。とくにテレビで。あらじんの演奏は指揮者がいるわけでもなく、うまく全員で演奏している。

障害者が何かに挑戦する物語では、どうしてもスタート地点がどのレベルで、それがここまで挑戦できた。という切り口で語られることも多いように感じる。それが全て見下している感だとは思わないが、思いやりの拍手みたいな感じを受ける。やはり、アートとかステージとかで感動するというのは、説明抜き・前情報抜きで感動できるのが本物だと思う。

体は動くけれど、知的障がいを持った人達には、クラシックのようなステージではなく、のびのびと表現できる和太鼓のようなステージが、とてもマッチしていると思う。
障がいのある人に、何かひとつでも楽しんで打ち込めるものを持ってほしいと、周囲の人々は考えたりするだろうが、和太鼓はいいなと思った。

そんなわけで、第3回 表現の市場。どの演目も目から鱗のすばらしいものでした。あらじんのことばかり書いてすみません。(赤ちゃんと外に出てたり、長女と歩き回ったりしていた時間もあったので)

障害児の父親として、少しはいろいろな障がいのある方を理解してきている自負があったが、
「舞台に立っている障がいのある人たちが、ほんとうに自分の思っているとおりの人たちなのかどうか、自分の目でしっかり確かめてください」
というメッセージ通り、「思っているとおりの人たち」ではなかった。
また、次の機会を楽しみにしたい。